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「モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ」の誕生秘話 江崎慎平監督×脚本家・岸本卓が語る

スマホから生まれたひっぱりハンティングRPG『モンスターストライク』。現在は世界累計利用者数3,500万人を突破し、依然ゲーム業界の台風の目となっているが、アニメ化を発表したさいもアニメ業界をにぎわせた。1話あたり約7分。TV放送はなく、YouTubeで毎週、しかも全世界同時配信を行い10カ国語の字幕(音声は日本語)に対応しているというものだ。配信中には視聴者の意見を物語に反映させるなど、従来のアニメ制作とは一線を画す形式をとった。
加えて2016年の夏には「映画作品」の発表。配信から劇場へ、このプロセスは驚きをもって迎えられた。
YouTube版が10代、20代に訴求したバトルものだとすると、映画版はファミリー及び全世代へ向けたジュブナイル作品。クリエイター陣も異なっている。
登場人物こそYouTube版から引き続いているものの、YouTube版では中学生の焔レンたちが、映画ではその過去・小学4年生時代のレンたちが描かれ、どちらから作品に入っても十分に楽しめる作りだ。

小学4年生の焔レンとその仲間たちが、未来からやってきた影月明と助け合いながら、共通の目的のために旅をし、モンストで戦う――。レンたちの感情が瑞々しく描き出されたジュブナイル作品だ。

本作の監督は江崎慎平。初監督作品『ガンスリンガーストラトス』を経て、本作では初めて劇場作品を手がける。脚本は『うさきドロップ』でデビューし、『僕だけがいない街』、『ハイキュー!!』など数々のヒット作のシリーズ構成・脚本を務める岸本卓だ。
この度、公開前のタイミングでおふたりに対談インタビューを敢行。どのような筋道を辿って物語が作り上げられたのかをざっくばらんに語っていただいた。
【取材・文/細川洋平】


――YouTube版『モンストアニメ』とは全く違う座組みとなりますが、本作に関わることになった経緯をうかがえますか?

岸本卓(以下、岸本)
去年の11月頃、ウルトラスーパーピクチャーズの平澤(直)プロデューサーから電話をもらったんです、「映画の脚本をやらないか」って。映画はいつかやってみたいと思っていたので詳細も聞かずに二つ返事で引き受けました。タイトルを聞いたのはその後なんですよ。「『モンスト』っていうゲームの映画なんだけど」と(笑)。ぼくはスマホを持っていないし『モンスト』は知りませんでした。家に帰って奥さんのスマホでダウンロードしてもらってやったりして。ただ動機としては「映画」。それでぜひやりたいと思いました。

――タイトルというよりは、むしろ「映画」という部分に惹かれたと。

岸本
平澤くんの言い方がうまいんですよ。ぼくが『モンスト』を知らないのも、スマホを持っていないのも知っているうえで、まず「映画なんですけど」と来て、その後にタイトルを出す。「いいですいいです、知らなくても」と(笑)。
でも、ゲームやYouTube版など全部を統括しているプロジェクト構成のイシイジロウさんが書いたプロットを読んだら「子どもたちの冒険物語」だった。ずっとやりたかったジャンルだったのですごくうれしかったですね。


――江崎監督はいかがだったのでしょうか。

江崎
ぼくは元々準備していた別の企画が滞っていたタイミングで、昨年末くらいに混ぜてもらいました。形としては途中参加ですね。ぼくも最初『モンスト』と聞いてどういう映画を作ればいいのかわからなかったんですけど、2回目くらいの脚本打ち合わせの時に、企画サイドから「YouTube版とはターゲットを分けて、全世代・ファミリーに向けた牧歌的な作品にして欲しい」というオーダーをもらったことで方向が見えてきました。打ち合わせでは『スタンド・バイ・ミー』や『グーニーズ』といった名前も出ていて、そういうジュブナイル作品をしかも映画で作れる機会はあまりないものですから「いい企画が来た! やばい!」と思って内心興奮していました(笑)。

――シナリオ制作はスムーズに進んだのでしょうか。中盤に出てくるロードムービー風のシーンでは岸本さんの実体験も盛り込こまれていたそうですが。

岸本
イシイさんからもらったプロットは大きく二つに別れていて、前半部分は研究所を舞台にして「なぜ『モンスト』というゲームがこの世に生まれたのか」という誕生秘話ががっつり書かれていました。YouTube版に対する答えというか、見てきた人にとっては満足度の高いものにしようという意気込みに溢れたものです。ここで壮大な物語が幕を開ける。
後半は主人公の焔レンたちが研究所を抜け出して、子どもたちだけでとある場所を目指して旅に出ます。前半に比べてこの部分は自由度が非常に高くて、プロットには舞台がどことも、日本だとも書いていなかった。ぼくはそこをどんどんふくらませて、ファンタジックな世界を旅 するんじゃなくて、「電車に乗って、どこまで自分たちは行ける?」といった"子どもにとっては大冒険"みたいな、『スタンド・バイ・ミー』のようになればいいなと。その中に自分の自転車旅行の体験がそのまま使えそうだ、ということで盛り込んでいきました。


――前半に散りばめられたYouTube版への応え方も見事な塩梅だなと思いました。見ていただくしかありませんが、大胆に描きすぎない分、YouTube版を知っている人にとっては、「あのはじまりはこんなものだったんだ」と思い知らされるというか。

岸本
レンと春馬への焦点の当て方はかなり考えたところです。そこは江崎さんが特に工夫された部分でした。何はともあれ、ゲームとしてのモンストや、YouTube版をまったく知らなくても楽しい映画になるように心がけました。


――本作はレンに焦点が当たっていてそこから「喪失感」や「仲間」というものがあぶり出されますね。特に「仲間」という部分はキャッチコピーにもありますし、かなり大切に描かれたのではないでしょうか。

江崎
仲間を描きたかった、というよりは「結果そうなった」と思っています。何しろ最初はいっぱい要素があって何の映画か見出しにくい状態だった。そこに何かひとつ、感情に筋が通るようなものがあれば成立するだろうと。そこでレンのお父さんがいなくなった出来事をピックアップして、レンの抱えた闇にしたんです。仲間がその闇から救うということで「仲間」が浮かび上がってくるだろうなと。

岸本
ここは紆余曲折ありましたね。一番最初に書いた時は影月明の物語だったんです。明は仲間の中でも後から加わったので、疎外感を感じていた。その明が、過去への冒険を通じて居場所と仲間を再確認する、と。これは完全に「仲間の物語」として成立していたんです。ただ物語の全体像が見えてきた段階で、明ではなく、やっぱり主人公はレンで行くべきなのではないか、という意見が出てきた。確かにそうなんですよね。はじまりの物語として過去は描かないといけない。じゃあ小学生のレンを主人公にしましょう。そこに明もやってくるのはどうかと。

――本作でレンがそこで主人公になった。

岸本
彼はお父さんがいなくて、わがままだったり無鉄砲だったりするんだけど実は……という主人公です。仲間の存在が助けになり、成長していく。その様子を明も見ている、と。ここまでで筋書きは整ったんですけど、ただ、ぼくは最初に明で物語を書いていたのでどうしても明に思い入れがあった。そこに江崎さんが入ってきてくれて「レンの心の葛藤が弱い」とか、まためんどくさいことを言い始めて(笑)。

――あははは(笑)。

岸本
ぼくは本当の意味で「明からレンへの方向転換」をしきれなかった、そこを江崎さんがグーッと強くやってくれた。特に後半のゴルフ場のシーンでそれが結実するんですけど、ここは物語を客観的に見てくれた江崎さんのおかげですね。ぼくも「これでやっと物語に背骨が通った」と実感しました。

江崎
やっぱり脚本打ち合わせって重ねていくと麻痺して来ちゃうんですよね。ぼくも途中から入って客観的に見られましたけど、やっぱり麻痺してるなと感じた時がありました。だから岸本さんに感情ベースでもう一回書き直してもらって。

岸本
そう、準決定稿で(笑)。準決定稿というのは本来「もうだいだいOK。あとは小直し」というものなんですよ。そのつもりで打ち合わせ前に提出して、あとは決定稿になるだけ、さっさと飲みに行こうぜと会議室のドアを開けたら、それぞれのシーンをカードにしたものが壁一面に貼られていたんです。「え、なになに? 何がはじまるの?」と思ってたら、江崎さんが「もう一回考え直したい」と言ってシーン毎の、レンの感情の流れを全部洗い直したんです。「終わらせる気、あるのかな」って思いましたよ(笑)。でもそこで最後にもう一段階上がった、という感じです。今思えばあれがあって本当によかった。

――レンと仲間たちのやりとりは心を揺さぶられました。そんな経緯があったのですね。

岸本
江崎さんのおかげですよ。


――本作は映像的にも非常にリッチで、瑞々しい画面が続きます。

江崎
映像のクオリティーそのものについてはキャラクターデザインの金子志津枝さんや、"ととにゃん"という美術スタジオの美術監督の加藤浩さんと若手の坂上裕文さん、そして美監補佐の船隠雄貴さんたち。また、色彩設計の大西峰代さんや、各パートの演出、作監、作画の方々、3Dスタッフ、撮影さん等々多くの方たちの粘りによって達成できたものだと思っています。
演出上で狙ったのは、光と影をふんだんに取り入れるということです。本編の大部分は子ども時代を描いていますので、その表現として、光と影の設 計をキッチリとやりました。簡単に言うとレイアウトの段階でパースがゆるかったりおかしい部分があっても、光と影さえちゃんと設計しておけば画面はリッチになるんです。逆(光と影の設計がユルく、レイアウトがキッチリしている)はありえないんですよ。ここは心がけました。

岸本
子ども時代はキラキラした思い出、ということですか?

江崎
キラキラもしているし、闇もまた深いということですね。単に美しくしたわけではありません。

――他にこだわった部分はありますか?

江崎
そうですね、カメラが演技するんじゃなくて、できるかぎりキャラクターに演技させようと思っていました。つまりカメラワークではなく、人物の動きをより見せようと考えて。


――中盤、『スタンド・バイ・ミー』のように線路を歩いている時に若葉皆実がぴょんっと飛んで体を一回転させるんですよね。あそこや山道を下る時に小さく段差をピョンと飛ぶなどの細かい仕草(作画)が本当にすばらしかったです。

江崎
そのシーンに関しては徳丸昌大くんという若い原画マンの仕事です。ライデンフィルムにいる有望な若手ですね。そういう意味ではぼくも今まで年下のスタッフとやる機会はあまりありませんでしたけど、「ついに年下の子たちを見る立場になったんだ」と実感した現場でした。元気なアニメーターもチラホラと出てきているんだなあとうれしくなりましたね。

――ありがとうございます。最後におふたりから「ここは注目してほしい」というところをうかがって締めくくりたいと思います。

江崎
あるポイントで歌を歌うんですけど、この歌や歌うシーンにはいろいろと思いを込めました。ぜひ注目してもらいたいですね。

岸本
ぼくは北大路欣也さんが演じるおじさんですね。ぼくが体験した自転車旅行で実際にあったことなんです。境内でテントを張ってたら神社の人が来て、家に招き入れてご飯を食べさせてくれました。「だからどうした」という経験なんだけど、すごく心に残っていて。この映画でもそんなに大きな意味を持たせてはいないんですけど、見終わっても心に残っている、という風になってくれたらいいなあと思っています。

――ありがとうございました!

『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』
12月10日(土) 新宿ピカデリー他 全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)mixi,Inc. All rights reserved.

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