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「CYBORG009 CALL OF JUSTICE」を作り出した3DCGアニメーションスタジオ、OLM Digitalとは?【スタジオ内覧レポート】

『サイボーグ009』の新しいシリーズが2月10日(金)よりNetflixで独占配信となる。『CYBORG009 CALL OF JUSTICE(以下、COJ)』と銘打たれたこのシリーズは2016年に劇場にて3週連続、各章2週間限定で順次公開された。
本作は『009 RE:CYBORG』で監督を務めた神山健治が総監督を務め、同作で演出を、『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』シリーズで助監督を務めた柿本広大が初監督を飾った。
注目を集めるポイントは本作がセルルック・フル3DCGであるということ。サンジゲンが制作し大きな話題を呼んだ『009 RE:CYBORG』に引き続き、神山総監督は3DCGの『サイボーグ009』でまた新たな伝説を作る。加えて現場レベルで指揮を執るのは『アルペジオ』で長い期間3DCGの現場を見つめ続けた柿本監督ということでまさになるべくしてなったスタッフィングといった感もある。アニメーション制作はSIGNAL.MDとOLM Digitalが行った。
特別編集された『COJ』が2月10日から、NETFLIXで独占配信される。劇場で見られなかった人はもちろん、全3章を見終えた人も改めて『COJ』を楽しむことができるいい機会ではないだろうか。

新旧アニメファンが注目する『COJ』の全世界配信に先駆けて、昨年11月、OLM Digitalのマスコミ向けスタジオ内覧会が行われた。OLM Digitalにとっても挑戦となった本作。どのような場所で、どのように制作が行われたのか、その一端に触れた。

■全3章の総制作期間は2年弱

OLM DigitalはこれまでフルCG作品では『パックワールド』、『One Pair』、『Kong: King of the Apes』、『ルドルフとイッパイアッテナ』などを制作してきた。また『妖怪ウォッチ』、『ポケモン・ザ・ムービーXY』、『ベイブレードバースト』、『フューチャーカード バディファイト DDD』などのアニメーション制作にも参加している。

本作のCGアニメーション部分は全てOLM Digitalが担当している。
具体的な作業を挙げると、キャラクターデザインや美術ボード制作、エフェクトボード制作、モデリングやリギング(骨入れ)、エフェクトなどの、ビジュアル面に関してのおおよそ全てだ。
脚本打ち合わせ、絵コンテといったいわゆる企画・根幹部分はシグナルMDで行われたとのこと。またプレスコ収録や音響作業などもOLM Digitalスタジオでは担当していない。

各章70分で全3章。取材時(2016年11月中旬)に作業はほぼ終了しており、最終チェック段階。総尺にして210分の制作期間はどのようなものだったのだろうか。

「要した期間は一章につき、レイアウトで16週。アニメーション(演技)は修正も含めて32週。コンポジット(撮影)やダビングなどの最終工程で16週かかっています。それぞれの作業は階段式に進行しているので、もう少しコンパクトになりますが、企画から完成までは全3章で2年弱でした」(OLM Digital /二宮侑樹)

OLM Digitalでは前述の通り、これまでキッズ映画をメインに制作してきた。初めて対象年齢の高い作品を手がけるに当たっては全ての3Dモデルをゼロから作る必要があり、その作業量はかなりのものだったようだ。

今回の制作現場では、Vコンテの別名として使われている「アニマティクス(*)」、CGの全素材を入れ込みカメラワークや尺を調整する「レイアウト」、キャラクターやオブジェクトの細かい動きを決める「アニメーション」というこの3つの工程は切り離して行われた。やり方はスタジオによって異なるがOLM Digitalでは担当の人間の得意分野に特化させたとのことだ。「レイアウト」を担当したのは全カットで6名。これはカメラワークを決めるという重要なポジションのため、限られたスタッフに任せられたのだという。「アニメーション」では1ライン7名の2ライン、合計14名で全3章を担った。

爆発や粉砕などのエフェクト処理に関しては物理演算(自動で動きが算出される)の場合もあれば、手で動きを付ける場合もあるという。モーションや画面作りはそういったリアリスティックな方法だけでなく、アニメーションならではの迫力を出すため、拳などの特定部位をスライドバーで簡単に巨大化させられるような設定が設けられている。アニメーションならではケレン味ある演出も随所に取り入れられているということだ。

■スタジオ内覧

スタジオ内部は、〈制作セクション〉、〈レイアウト/アニメーション〉、〈モデリング/リギング〉、〈コンポジット(撮影)〉などで大まかにフロアが区切られている。中でも〈コンポジット/ライティング( 照明)〉を担うセクションは常時照明が暗くされており、可能な限り正確な色味を再現できる環境が整えられていた。


ライティング&コンポジットスーパーバーザーを担当した唐澤収氏が実際の作業の様子を見せてくれた。
各セクションで作られた全ての素材を合わせて、光源などを入れ込みながらまとめる(コンポジットする)このセクションでは、複雑なツリー上のプログラムを操作しながら各レイヤーを調整していく。


「キャラクターの顔を綺麗に出すライティングや顎のライン出しというのはとても難しかったです。単純な光源からの光だけでは足りないので、影をカット毎に増減させています。また、キャラクターの体全体に輪郭を出すためのライティングを施しているのですが、これはOLM Digitalで初めてのやり方ですね」(唐澤)

各カット、担当者ごとにルックの差異が出ないよう、ある程度のシステムを唐澤氏が構築しているとのこと。ただ、細部では担当した人のセンスは出るらしく、その差異を唐澤氏は楽しんでいるようだった。


〈ライティング/コンポジット〉のセクションの奥、10畳ほどのスペースにはマスターモニターと呼ばれる色表現に優れた業務用のモニターが置かれており、石森プロ、神山総監督、柿本監督といったメインスタッフもここで映像チェックをする。モニターのサイズがさほど大きくなかったことが印象的だった。

■OLM Digitalとしての挑戦作

3DCGは極端に言えば、モデルが揃っていれば流用は可能だ。フローやシステムが確立すればコストが抑えられると考えられるのだが、OLM Digitalではどうだったのだろうか。

「コストはかなりかかっています。2Dに比べ、3DCGは出てくるもの全てを作らなくてはいけません。その分時間も人員コストもかかります。全3章に関わった人員は400人近く。もちろん今後、全く同じルックでのシリーズが続けば、その時のコストはもう少し抑えられると思いますね」(二宮)

全3章総じて、制作したキャラクターモデルは55体。衣装替えなども含めての数字だ。ゼロゼロナンバーサイボーグなどのメインキャラクターは状態に合わせて2~4体のモデルが制作されたという。また国連軍ガーディアンズが駆るマシーンなどは部隊ごとにカラーリングが違うのだが、個別にモデルを用意している。

■雑感

キャラクターデザインは齋藤将嗣。斎藤氏は『楽園追放 -Expelled From Paradise-』を経たこともあり、3DCGのモデリングに配慮されたデザインを作り上げている。そのキャラクターが紡ぐ物語を描くために考え抜かれた絵作り。もはや「最新技術」という呼び名の目新しさを見るのではなく、この技術をどう活かし、作品をどう描くかにクリエイターたちの視線も集まっている。大人向けのルックをした3DCG作品には初挑戦とはいえ、OLM DigitalはCG作品で業界を大きく牽引してきた実績を持つ。その経験と試行錯誤の結晶が『CYBORG009 CALL OF JUSTICE』であるといえるだろう。
神山健治と柿本広大がOLM Digitalと共に生み出した新たな『サイボーグ009』はどのような姿をしているのか。その目で確かめてはいかがだろうか。

Netflix オリジナルアニメシリーズ『CYBORG009 CALL OF JUSTICE』
原作:石ノ森章太郎 / 総監督:神山健治 / 監督:柿本広大 / キャラクターデザイン:齋藤将嗣
アニメーション制作:SIGNAL MD・OLM Digital,Inc.
製作:石森プロ・Production I.G
http://www.cyborg009.jp/

Netflixで2月10日(金)より配信スタート!
https://www.netflix.com/jp/

「CYBORG009 CALL OF JUSTICE」を作り出した3DCGアニメーションスタジオ、OLM Digitalとは?【スタジオ内覧レポート】
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