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【EDIX2017】特別支援教育でのICT活用にマイクラも…つくば市立春日学園

 5月17日から3日間、東京ビッグサイトで行われている教育分野日本最大の専門展「第8回 教育ITソリューションEXPO(通称、EDIX:エディックス)」。企業、団体が製品を展示すると同時に、会場では文部科学省や教育関係者らが登壇する講演や専門セミナーも行われている。

 18日午後3時から行われた教育ITソリューション専門セミナーの小中高校コースでは、つくば市立春日学園義務教育学校教諭・特別支援教育コーディネーターの山口禎恵教諭が登壇。「ICT活用でひとりひとりに合う学びを実現~児童・生徒の出来る!を引き出す~」というテーマで、同校での特別支援教育におけるICT活用の事例とその効果について語った。

◆マイクロソフト認定 教育イノベーターに選出

 春日学園義務教育学校は、施設一体型小中一貫校として平成24年度に開校。平成28年度より春日学園義務教育学校という名称になった。「Microsoft Showcase Schools 2016」に日本代表3校のうちの1校に選ばれ、平成28年7月には文科省より情報教育推進校(IE-School)にも選ばれるなど、ICT活用において先進的な公立小中一貫校だ。

 特別支援教育でのICTに関わる研究においては、平成26年度から27年度にDO-It Japanアクセシブルテストプログラム実証研究、平成27年度にはWindows クラスルーム 協議会のICTを活用した合理的配慮実証研究を実施。山口教諭は、平成28年から29年度「Microsoft Innovative Educator Experts(マイクロソフト認定 教育イノベーター)」に選ばれ、平成28年度には「Minecraft Education Edition」を使用した授業を公開するなど、特別支援教育でのICT活用に積極的に取り組んでいる。

◆読み、書き、不安、場面緘黙…個々の困り感はさまざま

 山口教諭は、支援学級の生徒がかかえる「困り感」は多岐にわたり、「読み」「書き」「算数」での困難から不安を感じ、登校渋りや場面緘黙(かんもく)、問題行動などが見られるケースがあるという。さまざまな「困り感」が重なった生徒たちであるとし、支援学級ではどのようなICT活用ができるかを考え、ひとりひとりの特性によって、どのような手立てをしてきたかを「オーダーメイドのICT活用事例」として、5名の生徒を例に実際に使用した教材を紹介しながら説明した。

◆「読みの困難」Aさんのオーダーメイド例…聞いて覚える

 「読みの困難」が見られるAさんは、読み書き障害の疑いと自閉症スペクトラムの特性があり「100点がとれないならテストを受けない」と、2年生からテストを拒否するようになったという。読みは苦手だが、聞いて覚える力があることから、山口教諭がPowerPointで音声読み上げテストを作成し、タブレットを用いた音声読み上げのテストで取り組んだ。読むテストでは20~30点だったところ、60点以上をキープしたという。国語が得意科目になった、と生徒自身も話すようになり、成果を得ることができたと説明した。

◆「書きの困難」Bさん、Cさんのオーダーメイド例…視覚から情報、答えを話させて代筆

 「書きの困難」が見られるBさんは、想像力が豊かなことから、漢字を書かずに覚えられる方法を考案。漢字を覚えるための「お話しづくり」を行い、PowerPointのアニメーション機能で復習も行えることから漢字テストの点数が上昇傾向になったと成果を説明した。

 同じ「書きの困難」が見られるCさんは、書字障害の疑いと自閉の特性もあり、書くことに時間がかかるという理由から授業や宿題への取り組み意欲が低下、授業中に腹痛を訴えることが多くなり、徐々に学校へ来ることを渋るようになったという。CさんはWISC(知能検査)の結果などからも耳で聴くよりも視覚からの情報の方が入りやすいことがわかり、書かなくても取り組みやすい型をPowerPointで作成。国語の文章作りでは、生徒には口頭で説明してもらい、教師が代筆し直接パソコンでPowerPointの型に打ち込んだ。その他、生徒に絵文字を書かせて説明させるなど、構造化を図ることで1日の流れや見通しを持てるようになり、不安愁訴が激減し、毎日登校することができるようになったと話した。

◆「場面緘黙」Dさん、Eさんのオーダーメイド例…読み上げ音声や好きなマイクラで自立活動

 「場面緘黙」が見られるDさんは少人数の支援学級では活発に話すが、自閉症の特性もあり、場所が変わっても同じクラスの子がいる場合は話さない、というこだわりがあった。人と関わりたい思いは強いことから、コミュニケーションアプリ「たすくボイス」を使用し、読み上げ音声で自分の意見を 伝えられるよう手立てを講じた。2年間継続した現在は朝礼などで先生に呼びかけられたときに、アプリを使って返事ができるようになったと説明した。

 同じ「場面緘黙」が見られるEさんは、教室では挨拶のみで、話したいことがあるときはノートに筆談する状態だった。支援学級にも入っておらず、話したいのに話せないストレスからか、家では親にあたるなど、家以外に安心できる場がなかったことから、好きなゲームを通じ、支援学級で心を許せる仲間をつくる手立てを講じた。

 Minecraftが得意な異学年の少人数グループを特別支援学級でつくり、Minecraft Education Editionを使った自立活動に取り組んだところ、Eさんは筆談や定型文の読み上げ音声を利用し、「手伝ってほしい」「駅がつくりたい」「もっと線路をのばしたい」などと自己主張をするようになったと説明した。

◆通常学級では恥ずかしさを感じる生徒も

 「書きの困難」なBさんは、通常学級でも書くことを軽減し学習に集中できるよう、黒板の板書を撮影・印刷しノートに貼るという手立てを講じたところテスト点数も上がったが、「みんなと違うことが恥ずかしい」と撮影をしなくなったという。「みんなに障害者だと思われるからいやだ」と通常学級でのタブレット利用に抵抗が強い生徒もいることから、通常学級で他の生徒たちもタブレットを持たせたところ、自分だけが特別ではないと認識し、タブレットの利用を受け入れるようになったと話した。

◆今後の課題はユニバーサルな環境づくり

 山口教諭は、ひとりひとりの「困り感」に合わせてオーダーメイドのICT活用を継続するためには、支援学級担任が変わっても同じ支援を継続できる体制づくり、どんな先生でも使えるICTが必要と話した。また、支援もずっと同じものではなく、成長に合わせて柔軟に変化させていくこと、家庭でも使えるように、指導者から保護者にもICT活用についてこまめに連絡を取り合うこと等を課題にあげた。小学校から中学校、高校へと進学する際にも、合理的配慮の取り組みの成果を、学校と家庭で共有し、引き継いでいくことが重要と話した。

 山口教諭は、子どもひとりひとりの特性を受け入れ、「目が悪い子どもが眼鏡をかけることと同じように、この子にはタブレットが必要」と共感できるユニバーサルな環境づくりが、通常学級や学校で大切なこと、と締めくくった。
提供元:リセマム

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