国際デジタルえほんフェア実行委員会が主催の「第5回デジタルえほんアワード」の結果発表および表彰式が5月27日に開催された。今回は海外からの応募作品も多く、ドイツから応募の体験型絵本「Lucy & Pogo - play, listen and learn」(作:catsndogz gbr)がグランプリを受賞した。
「デジタルえほんアワード」は、電子書籍やアプリと絵本を融合させた新しいメディアである「デジタルえほん」の普及・拡大を促進するため、国内外の優れた作品を表彰するもの。5月27日に東京大学大学院情報学環・福武ホールにて、結果発表と表彰式が開催された。 審査員は、絵本作家のいしかわこうじ氏、きむらゆういち氏、KADOKAWAの角川歴彦会長、デジタルハリウッド大学の杉山知之学長、タレントの篠原ともえ氏などメディアやクリエイターを代表する人たちが務めた。応募作品数は39か国から299作品が集まり、過去最多となった。 ◆グランプリはcatsndogz gbr(ドイツ)の作品 グランプリには、ドイツからcatsndogz gbrの作品「Lucy & Pogo - play, listen and learn」が選ばれた。大好きな犬のともだちPogoと一緒に学校に行きたい猫のLucyがあれこれ工夫して犬の学校に入学するというお話だ。読者は、Lucyが犬に変装するのを手伝ったり、猫であることがばれないよう助けたりする。完成度の高いストーリーを、デジタル技術を活用した知育ゲームのような進行で楽しめるようになっている。 準グランプリには、デンマークからStep In Booksの作品「Mur」が選ばれた。冬眠をしたくない熊の話で、ストーリーやイラストのクオリティの高さに加えてAR機能によるインタラクティブな動きなど、正統派絵本にデジタルの良さを加えた点が評価された。Step In Booksの作品は「Wuwu & Co. - a magical picture book」が今回より新設された「セサミストリート賞」も受賞した。 ◆新設の「デジタルえほん キッズ賞」 今回新設された「デジタルえほん キッズ賞」は、応募作品のうち子どもたちが作ったデジタルえほんから選りすぐった作品を表彰するもの。以前より中学生らによる作品応募、受賞はあったが、今回からは園児・児童・生徒らがクラブ活動、プログラミング教室で作った作品を部門として独立させた。 「デジタルえほん キッズ賞」のグランプリはScratch(スクラッチ)で開発されたという「たいようけいをすくえ!だいさくせん」(作:ユーバープログラミングスクール)。準グランプリは「あり男VSアリ男」(作:中代 悟心くん)。小学1年生からプログラミングを始めたという中代くんの作品はViscuit(ビスケット)で開発された。 「デジタルえほん キッズ賞」には幼稚園児たちの作品も入選作品に選ばれ、表彰式には香川富士見丘幼稚園ビスケット塾の園児たちが出席し、審査員の篠原ともえ氏より賞状を受け取った。 審査員のいしかわこうじ氏は、どの作品も絵本や物語としての完成度、ストーリー性など質が向上してきたと総括。「デジタルえほん キッズ賞」では「作り手である子どもたちが楽しんでいたことがよかったと思います。」と述べた。また、審査員の篠原ともえ氏は「絵のタッチやストーリーなど子ども供たちの手作り感がたくさん出ていて、選んでいてとても楽しかった。ツールもあるそうなので自分でも作ってみたいと思いました。」と話した。 ◆海外のデジタル絵本事情 今回は世界39か国と、応募も入賞・受賞ともに海外勢が躍進した結果となったが、海外ではデジタル絵本の状況はどうなのだろうか。 グランプリと準グランプリの受賞者に聞いてみたところ、Step In Booksは「デンマークにはデジタル絵本という分野のアワードは特にありません。絵本は、書籍全体のアワードの部門のひとつとして表彰されています。」と述べた。catsndogz gbrも「ドイツでも同じような状況です。Lucy & Pogo - play, listen and learnのような作品は、書籍のコンテストやアワードに応募するか、ゲーム分野にくくられる。」とのことだった。 表彰式の会場には、今回は受賞ならず、記念の積み木型トロフィーがもらえず悔しがる子どもの姿も見られた。来年は雪辱を果たしてくれることを期待したい。
提供元:リセマム
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