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成長期に差しかかった中国のアニメビジネス ~2017杭州アニメフェスティバルを訪ねて~ 第4回「中国劇場アニメの未来は?」

成長期に差しかかった中国のアニメビジネス
~2017杭州アニメフェスティバルを訪ねて~ 第4回「中国劇場アニメの未来は?」
[増田弘道]

■中国映画BOX OFFICE
最後に世界第二の映画市場であり、躍進著しい中国における劇場アニメについて述べてみたい。
まず中国映画における劇場アニメの存在感について。表4は2016年中国における映画興行収入である(為替レートは2016年の平均値一人民元=16.38円で計算)。トップの周星馳(チャウ・シンチー監督『美人魚』の555億円という数字には驚くが、2位の『ズートピア』251億円も北米が3.4億ドルであったことを考えると驚異的である。結局ベストテンに入ったアニメーションは『ズートピア』と『カンフーパンダ3』だけ、10位から20位にはランクインなし、22位に『君の名は。』が入るという結果であった。昨年は10位に『西遊記大聖帰来』(28位に『ドラえもんSTAND BY ME』)が入ったのみであったことを考えるとアニメーションの存在感は増したと言えるが、日本やアメリカのことを考えるとまだまだ発展の余地があるのではないかと思われる。


■意外と伸び悩んだ中国製アニメ
表5は中国BOX OFFICEにおけるアニメーションベスト20位である。アメリカが9作品(緑)、中国が6作品(赤)、日本(青)が4作品という内訳で、興行収入的にもアメリカ354億人民元(581億円)、中国230億人民元(384億円)、日本101億人民元(165億円)となっており、やはりハリウッドの存在感が大きかったと言えよう。
中国に関しては表6にあるように2015年の20.5億人民元(336億円)から23.4億人民元(383億円)と順調な成長を示した。しかし、その中には全体興行収入2位、中国製アニメーション1位の『カンフーパンダ3』が組み込まれている。だが、この作品が果たして中国作品と言えるのか? 確かに外資が出資比率のメジャーを取れない中国において『カンフーパンダ3』を製作したオリエンタル・ドリームワークスは中国企業と言えよう。だが中国人が呪文のように唱えるIP的側面から言えば、『カンフーパンダ』は間違いなく米国産である。もし『カンフーパンダ3』が中国ではなくアメリカにカウントされていれば中国製のアニメーションの興行収入は前年度マイナスとなる。この状況は中国のアニメーション製作陣の層がまだ薄いということを示している(ドリームワークス本体が『ミニオンシリーズ』や『ペット』、『シング』などで絶好調のイルミネーション・エンタテインメントの参加となりオリエンタル・ドリームワークスの持株を手放すのではという情報もある)。
そんな中国作品の中で存在感を示し、今後の中国アニメーションに大きな期待を抱かせたのが『大魚海棠 /Big fish Begonia』である。




■中国アニメーションの可能性を示した『大魚海棠 /Big fish Begonia』
この作品は中国で初めて作家性を持った作品(日本で言うならばスタジオジブリに例えられると思うが)がメジャーヒットした例として歴史に残るであろう。企画から12年もかかり完成が危ぶまれたものの、『美人魚』(製作参加)や『君の名は。』で名を馳せた北京光線電媒(Beijing Enlight Media Co., Ltd.)の力を得ての大ヒットとなった。音楽に『時をかける少女』の吉田潔を起用したことからも伺えるが、日本の影響を多分に受けた作風であり、随所に宮崎駿はもちろん今敏などへのオマージュが垣間見られる。作品の作画レベルとしては正直日本の作家作品レベルには及んでいないが(多分本人たちも内心忸怩たるものがあるのではないかと思う)、これから発展する余地は十分あるだろう。実はこの作品の監督は北京の精華大学出身。中国の超名門校であるが、そこを卒業した監督がアニメ産業界に出現したこと自体(注5)中国におけるアニメーションの地位が上がりつつあることを示しているのではないか。
(注5)「名門精華大学を卒業した監督が出現したこと自体」:本作品は監督が2人いるが梁旋監督、張春監督両名ともに清華大学出身。梁旋監督は火力発電専攻するも中退、張春監督は清華大学美術学院卒業.

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