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教育者も技術者も起業家も、そして投資家も…みんなで「Edvation」を起こそう<Edvation x Summit 2017レポート>

 教育・人材育成に関する国際的なカンファレンス「Edvation x Summit 2017」が、2017年11月5日・6日に開催された。会場である千代田区立麹町中学校と海運クラブ国際会議場では、基調講演、ディスカッション、展示会などを通して、国内外のイノベーティブな先進事例、多様な教育ソリューションの紹介が行われた。

 「Edvation x Summit」は、教育イノベーション協議会が主催する国際カンファレンス。開催は2017年が初めて。テクノロジーを活用した教育イノベーションを「Edvation」と表し、Education(教育)にInnovation(革新)をもたらす国内外の先進事例や、ベンチャーを筆頭に多様化した教育ソリューションを体感できる場を提供する試みだ。

 開催2日目にあたる11月6日午後には、「【スタートアップ・エコシステム】教育のイノベーション“Edvation”を加速するインキュベーションの仕組みとは?」と題して、スタートアップ支援・ベンチャーキャピタル(VC)・起業といった視点から、教育やEdvationを見直すディスカッションが開催された。パネラーは、野崎智成氏(活育教育財団 代表理事)、澤山陽平氏(500 Startups Japan マネージングパートナー)、菅原岳人氏(東京大学 産学協創推進本部イノベーション推進部 助教)の3名。モデレーターは馬田隆明氏(東京大学本郷テックガレージディレクター)が務めた。ディスカッションは、それぞれがひとつずつテーマを提示し、それについて話し合う形で進められた。

スタートアップで大切なのは「スピード感」

 ディスカッションではまず、モデレーターの馬田氏が「(実際に実施して)Edvationが加速した仕組み」は何か、というテーマを提示した。

写真:馬田隆明氏(左)
 これに対して、澤山氏が「いきなり結論(笑)ですが、『一番早く学習したひとが勝つ』ということです」と回答。澤山氏は、シリコンバレーを拠点に世界60か国、1,800社以上に投資するシードベンチャーキャピタル「500 Startups」の日本パートナーとして、日本向けファンド(約40億円)を取り扱っており、神戸市と連携したスタートアップ支援プログラム「500 Kobe Accelerator」では2年で40社以上を育成した経験を持つ。

写真:澤山陽平氏(中央)
 澤山氏は続けて、「スタートアップや新規事業では、競争の仕方が変わります。従来のビジネスであれば、優秀な人がいるところ、巨大な資本を持つところが勝ちます。しかし、まったく新しいビジネスでは、サービスを実装し、アプリを投入し、リアクションをもとに学習し、クイックに改善することがもっとも重要です。私たちが手掛けた例では、“いかに安く早く簡単に実験を行うか”“いかに学習速度をあげるか”が、大事でした」と説明。

 続けて、ビジネススピードが遅いという原因には「作り込んで出したい」という気持ちがあると分析。同氏はその作り込みも大事なことだが、「まごまごしてるリスクのほうが大きい。あとからみて『みっともない』と思うぐらいじゃないと、遅すぎる感覚だ」とし、スピード感の大切さを強調。「こうしたノウハウを、どう起業家に授けるかもポイント。神戸の事例では、シリコンバレーから毎週、自身も起業家だった人たちが入れ替わりで来てくれて、こうした感覚を伝えてくれた」と、実例をあげて説明した。

 澤山氏の回答を受けて、野崎氏も「まさにそのとおり。『プロトタイプをどんどん作ろう』は僕たちも言っていた」と肯定。そのうえで、「『起業したい』という教育関連の人たちは、そのように考えた理由、そこに至る原体験の比重が大きい。“どストレート”にそこにいっちゃう。ただ、そのため大風呂敷になりがち。大風呂敷を広げると、逆に投資してもらえなくなってしまうことも多い」とコメントした。

写真:野崎智成氏(中央)
 そして、野崎氏は「ボロボロでもいいから世に出す、それを(PDCAサイクルの中で)ぐるぐる改善する、というのが大事だと思います」と補足。教育特化型のベンチャーキャピタルとして、企業だけでなく非営利団体や先生も支援できる仕組みを作ろうとしている野崎氏にとって、実際に協力してくれる会社や学校をマッチングする、試す場を作るというのは大きな仕事だそうだ。

 2氏の発言を受け、菅原氏は自らの経験を共有。計画から実施、改善までを高速回転させるビジネススピードも大切だとしたうえで、「成果は長期的・短期的の2種類があると思います」とコメント。「私たちのところでは、なかなかスタートアップが生まれなかった。これは“成果が出ていない”と見なされました。しかし、5年以上過ぎた段階で、昔に講座を受けて いた人たちが起業して、その実体験を後進に授けてくれるようになりました。だから、こうした継続性も重要だと思います」と、長期的な視点も大切だと指摘した。特に「当初はコミュニティを作っていない時期があったが、これは失敗だった」(菅原氏)とのことから、スタートアップではやはり、人的ネットワークが重要であることがわかる。

写真:菅原岳人氏(右)
 「コミュニティ作り」というのは、ひとつの鍵となるようで、澤山氏と野崎氏はいずれも感想を述べている。特に澤山氏は「最初に支援できる数は限られている。しかしやればやるほどネットワークが増え、支援が加速していく」としている。

 なお、菅原氏によると東大は“ギーク”なコミュニティに分かれているが、どこかつながりを感じる“親戚感”があるという。「最初からダイバーシティを意識しすぎて、みんな同じコミュニティを作るとうまくいかない小さいコミュニティを作って隣接させていくほうがいい」と、独特な背景にも言及している。

教育ビジネスはミッションなのかマーケットドリブンなのか

 次に、野崎氏が「(教育ビジネスは)ミッションかマーケットドリブンか」というテーマを提示。当日の会場は、教育関係者よりスタートアップ関係者が多かったこともあり、「ビジネスとして成立することは大前提。教育だけでなく、ヘルスケア領域でも、ビジネスはおろそかにされがちです。“ミッションが間違っていること”はまずないが、風呂敷を広げすぎて、見落としていることが多々あるので、継続性を担保してもらうのが重要。それをアドバイスするようにしています」と、まず菅原氏が、どこを補完するかという観点で回答した。

 澤山氏は「僕は全ジャンルに投資するVCですが、『ミッションかマーケットドリブンか』という二者択一ではなく、両方のつじつまを合わせるのこそが起業家の仕事だと思います」と、自身の立ち位置を説明。そのうえで「課題をどこまで達成するのかが大事だと思います。『世界を変えたい』『5年で変えたい』なのか、『日本で成功したい』なのかでも違います。たとえば統計的に、ベンチャーの95%は失敗しています。ここから逆算すると、20~100倍ぐらい成功する会社じゃないと投資できない。実はまだ教育系には投資できていない。それはそこまで確信を持てるスタートアップがまだないからなんです」と現状を説明。「どうやってスタートアップモデルに落とし込むかを悩んでいます」(澤山氏)と、教育ビジネスへの投資の難しさをにじませた。

 これに対し、教育畑の野崎氏は「僕たちはミッションと言うよりパッションを重視。心が折れないこと、柔軟性を持っていることなど、人物を重視している」と、投資における観点を説明している。

ダメ出しは効果的に…支援したくなる人の条件

 野崎氏に続く、菅原氏のディスカッションテーマは「イケてないアイデアの効果的な殺し方は?」。アイデアベースで出てきた企画について「ダメ出しするのは簡単だが、次につながるダメ出しの仕方、(つまり)効果的な“殺し方”で悩んでいる」(菅原氏)とのことで、こうした点をほかの2人に質問した形だ。

 まず澤山氏は「考えはふたつあるかと思います。ひとつはタイムボックス(時間制限)を設定すること。もうひとつは、やりたいことと起業という手段があっているのかを考えさせること。後者は、企業設立だけでなく、NPOだったり、企業の一部門での展開だったり、個人だったり、さまざまなやり方があると教えてあげるのも大切だと思います」と回答。

 野崎氏は「最初の話に戻りますが、とにかく実装してみて、“マーケットに聞く”のがいいと思います」と、スタートアップならではのスピード対処を重視した。これについて澤山氏は「サイト1ページだけ作って、メール受付中にして、Facebook広告を出す。これでどこまで反応があるかは実験できます。数万円程度で、サービスに対する反応を市場から得られます」と具体的なアイデアを提示した。一方で、「このときに、コーチャブルでない人(アドバイスを聞いてくれない・理解できない人)は支援が難しいですね」と、起業家の人柄にも言及。これについては、ほかのパネラーも「世の中のテクノロジーが発展している分、柔軟性がない人は難しい」(野崎氏)と指摘した。

技術者も教育者も投資家も起業家も、みんなでEdvationを起こそう

 当日は3氏による話題提起と議論ののち、質疑応答の時間が設けられた。そのなかで、会場からの「教育領域でスタートアップが足りていない領域は?」という質問が提示された。3氏は「教育に限らなければニューロサイエンスですかね。教育ソリューションということでは、多すぎて絞れないです」(菅原氏)、「社会人向け教育で、もっといろいろとできることがありそ うに思います。思いつきですが、マネージャ育成とかに限ったスタートアップが出てきてもおかしくない」(澤山氏)、「営業とか科学的に企業研修とかできそうですよね。そういうベンチャーが出てきてもいい」(野崎氏)と回答している。

 最後にまとめとして、各氏は「教育領域は広いし答えがない。それが魅力的。自分ひとりでは何もできないので、一緒にイノベーションをやりましょう」(野崎氏)「できるだけ、みんなおおらかになってほしい。いろんなことをいろんな人がチャレンジするので、できる範囲で手伝ってあげてほしい」(澤山氏)「現場に新コンテンツを導入するのはすごく大変。そこを解決するスタートアップが出てきてくれたらいいなと思いました。技術者も教育者も投資家も起業家も、関係者みんなが入らないと解決できない。そんなことを考えました」(菅原氏)と感想を述べている。

 投資家や起業家の視点から、教育ソリューションを見直す場となった今回のセッション。「新しいことを始めるときに大切なのは、スピード感と人的ネットワーク」「使命感も商売も、どっちも大事」「次につながるアイデアの見直し方」など、多角的な視点が生かされたディスカッションだった。
提供元:リセマム

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