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中学生が行うDNA鑑定実験、広尾学園がサイエンス教育を通じて伝える学びとは

 広尾学園中学・高等学校は、同校の中学生以上を対象に「DNA鑑定実験講座」を実施した。広尾学園は、教育ICT導入の先駆者として早くからiPadやMacBookの導入を試みたことで知られているが、医進・サイエンスコースの研究活動に代表される理科教育も特長的だ。今回は、医進・サイエンスコースがキャリア教育の一貫として実施している特別講義をレポートする。

 参加者は、中学1年生を中心に、中学2年生や高校生を含む生徒たち。4名ごとのチームに分かれ、各グループのティーチングアシスタントとして、医進・サイエンスコースの高校生1人がつき、中学生たちの実験をサポートした。「DNA鑑定」をテーマにした同講義は、朝から夕方まで丸1日を費やして行われ、講義のみならず、生徒が自ら手を動かして確認する実験や、問題解決能力を養うリサーチワークなどが行われた。

 広尾学園で医進・サイエンスコースをマネジメントする木村健太教論は、飛躍的に発展する生命科学の分野の研究結果は私たちの生活に広く浸透しているが、それに対する社会の認識はあまりにも低いと解説。DNA鑑定技術や遺伝子組み換え食品などに対する知識はもとより、非常に重要な個人情報であるゲノム情報を今後どのように扱うべきか、その判断のために必要な情報はどのおように収集できるのか、自ら学ぶための手法を学んでもらうことが実習の目的だと実験テーマを選んだ経緯について説明した。

◆「お酒に強いか?弱いか?」を遺伝子レベルで調べてみよう

 午前中は、グループごとにDNAに関する実験が行われた。実験内容は、生徒自身のゲノムDNAを用いて、アセトアルデヒド脱水素酵素の遺伝子型を鑑定し、「自分がお酒に強いか?弱い人か?」ということを調べてみる、というもの。

 お酒を飲むと、中に含まれるアルコールがADH(アルコール分解酸素)によりアセトアルデヒドに変化する。さらにALDH2(アセトアルデヒド脱水素酵素)により酢酸へと変化するという。アセトアルデヒドには毒性があるため、体内に残ると気持ちが悪くなってしまう。したがってALDH2の働きの弱い人は、アセトアルデヒドの分解能力が低く、体内に残るためお酒を飲めない人もいるという。

 このように「お酒に強いか?弱いか?」を決める要因は、アルコール代謝に関わる「ALDH2遺伝子」の遺伝子型(正常型/変異型)によって決定される。つまり「正常型」を持っていればお酒に強く、「変異型」を持っていればお酒に弱いというのが基本だ。

 遺伝情報をのせた染色体は2本あり、父親と母親から1本ずつ引き継ぐため、ALDH2遺伝子も「正常型・正常型」(お酒に強い人)、「正常型・変異型」あるいは「変異型・正常型」(少しは飲める人)、「変異型・変異型」(お酒がほとんど飲めない人)という組み合わせが考えられる。つまり、この型の組み合わせを調べれば、生とそれぞれの遺伝子型を鑑定することができ、お酒に耐性があるのかどうかがわかる。

 これら実験の原理と、実験手順の説明を受けた後は、実際に電気泳動などといった実験を各グループごとに午後過ぎまで実施。最後に実験結果の考察も行われた。グループごとにiPadで実験結果を撮影し、ALDH2の遺伝子型を判定、その後判定結果を簡単なレポートとしてまとめて、専用サーバーにアップロードしていた。

◆学ぶための手法を学ぶ「リサーチワーク」

 DNA鑑定を行い自分の遺伝子型を調査し、結果を共有・考察した後は、リサーチワークが行われた。生徒たちへの説明に向かう木村教諭が「ここからが本番なんです」と話してくれたのが印象的だった。リサーチワークは与えられた未知の問題、そのテーマに対する答えを生徒自身がICTツールを用いてインターネットから情報を集め、内容を理解し、それをプレゼンテーション資料にまとめて発表し、議論するという内容のもの。

 今回のDNA鑑定講座でリサーチワークが行われたのは、与えたテーマが生命科学分野からのものだということもあるが、もうひとつ重要な狙いがあると木村教諭は話す。現在、TVや新聞、インターネットなどで数多くの科学分野の話題が報道されているが、その言葉だけを知り、正確な内容の理解まではできていないことが多いのではないか。与えられる知識を鵜呑みにするのではなく、主体的に物ごとを調べること、そしてその調べ方や答えにたどり着くまでのアプローチの方法を学ぶことこそが、リサーチワークの最大の狙いだと木村教諭は説明する。

 今回は、一塩基置換で表現型が変わる現象にテーマを絞り、与えられた謎を解くためのリサーチワークが行われた。テーマの一部を紹介すると以下のようなものだ。

・犬の足の長さを決める遺伝子は?
・犬の毛の性質を決める遺伝子は?
・植物のアルコール代謝遺伝 子は?
・マウスの難聴の原因遺伝子は?

 リサーチワークが始まると、各グループが謎を解くために必要な情報をICTツールを活用して見つけ出していく。インターネットを活用して情報を収集する場合、どの情報を手にするかという取捨選択の判断が必要になるため、信ぴょう性が担保された情報をどのように手に入れるかが重要になる。

 生徒たちはこの過程で、信ぴょう性が高く新しい情報とは、査読の通った学術論文から得られることを知り、そのほとんどが英語で書かれていることを実感する。英語で書かれた文章をどのように読みとくか、専門用語の意味をどのように調べればよいのか、行われている実験とその結果として示されたデータをどのように解釈すべきか、中学生生徒のつまずきを先輩である各グループのティーチングアシスタントがサポートする。ティーチングアシスタントの姿は、参加した生徒たちの身近で心強い先輩として憧れの目標として映っただろう。

 リサーチワークの発表を控え、各チームは自分たちのテーマに対する答えを示す論文とその内容をPowePointやKeynoteを活用してプレゼンテーション資料を作成した。発表後は、参加者同士で質疑応答の場面もあり、生徒同士が発見を共有し、学び合うことで講座が終了した。木村教諭は、「こんなにも質問がでるということは、みんな、わかりやすくおもしろい発表をしたという証拠」とコメント。実験やリサーチワークだけでなく、生徒同士が学び合う環境の大切さを強調した。

◆先輩から後輩へ、「学びを伝える寺子屋」のような細やかな体制

 このような学年の垣根を越えた講義は、向上心の強い生徒たちの能力を最大限に伸ばすだろう。仮説、実験、分析、調査、報告(プレゼンテーション)を、最先端の分子生物学的手法やICT機器を利用し、参加生徒に体験させることで理論的・科学的思考力を育成していく。その学びの過程には、教員だけでなく先輩高校生がおり、講座に参加した中学生にとって数年後の自分の姿と成長を容易にイメージすることができるよう講座が細かくデザインされている印象を受けた。

 広尾学園が実施する講座は特別なもので、他校では真似できないものなのだろうか。同校の取材を終えて、1つヒントになることに気づいた。広尾学園の場合、もちろん指導にあたる教員の尽力がベースになっているが、それ以外に大学や企業がバックアップする体制が整っている点は大きなポイントだ。

 今回の講座に関しても、エッペンドルフや池田理化といった生命科学系の企業が広尾学園に協力し、最先端研究機器の貸し出しや生徒たちへの使用方法の解説を行ったという。社会のニーズを捉えた教育を展開すれば、社会からの協力は得られるというよい実例だと木村教諭は語る。

 ティーチングアシスタントとして参加した同校の医進・サイエンスコースの高校生のサポートも同様だ。医進・サイエンスコースの生徒の1人は、後輩に何かを教えることは、私たちが何かを学ぶことでもあり、逆に後輩から学び取れることも多いのだとまとめた。
提供元:リセマム

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