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京まふ2014 ビジネスセミナーで理解を深めるビジネスモデルとしての「宇宙戦艦ヤマト2199」

[京都国際マンガアニメフェア2014]ビジネスセミナーで理解を深めるビジネスモデルとしての『宇宙戦艦ヤマト2199』

京都国際マンガアニメフェア2014では、各種イベントとともにビジネスセミナーも好例の行事として開催されるが、今年は、株式会社プロダクション・アイジー 企画室執行役員郡司幹雄氏が、「ビジネスサイドから見た『宇宙戦艦ヤマト2199』」と題したセミナーをおこなった。
プロダクションアイジーは製作委員会の主幹事であり、同社所属の郡司プロデューサーはそのビジネスまわりを担当している。『宇宙戦艦ヤマト2199』(以下、『2199』)は、1974年に放送された『宇宙戦艦ヤマト』(以下、『ヤマト』)のリメイク作品だが、講演の冒頭、郡司氏は『ヤマト』を取り巻く環境変化について詳しく解説した。
1974年、テレビは黄金時代を迎えておりアニメでも視聴率を30%とれる時代。結果的に、アニメーション放送枠に大企業(ナショナルクライアント)がスポンサードしている時代だった。

■ 初代「宇宙戦艦ヤマト」の70年代と現在で違うアニメのビジネスモデル

1社で番組全体をスポンサードするような大企業の場合、彼らが気にするのは、リーチとフリークエンシーだと郡司氏は言う。リーチとは自社のCMが単価あたり何人に届くか、フリークエンシーは、一視聴者に何回CMが見られるかを指す。商品を選択するときに知らず知らずのうちに重要な要因を占めるのはその商品のCMを何回見たかという親和性だからだ。だからこそナショナルクライアントは高い視聴率の番組へのスポンサードを望む。 

しかし、現在は娯楽の多様性が広がりアニメ番組自体高視聴率を得ることが困難となった。アニメ全体の平均視聴率も最近の統計では2.8 %(※電通総研編 情報メディア白書より)となっているという。このような状況下でも視聴率が10 %を超えるアニメは『サザエさん』、『ドラえもん』、『名探偵コナン』や『ワンピース』といったファミリーで楽しめる作品が主流である。現在はファミリー向け以外のアニメーションで高い視聴率を上げることは難しい状況なのだ。これは『2199』も同様で、全国ネットでのテレビ視聴率は好調だったものの上述のファミリー向けアニメのような視聴率にまでは至っていないと郡司プロデューサーは明かした。


■ BD/DVDでの回収が前提の現在のアニメビジネス

では、如何に収益をあげるのか?この点を説明するため、郡司プロデューサーは現在アニメ制作で主流となっている製作委員会方式について説明した。製作委員会方式とは、複数の企業がそれぞれ出資してアニメを作る方式であり、そこには、アニメ制作会社自身も出資しているケースもあるという。
従って、一般的に言われている、大企業から得たスポンサー料から、広告代理店がマージンを得るため制作費にまわされずアニメーターが苦しんでいると言ったマスメディアの言説は誤解だと郡司プロデューサー。製作委員会方式の大きな特徴は制作費の負担(出資)及び放送枠の買取(スポンサード)を製作委員会が負担することである。つまり、製作委員会はアニメをプロデュースする段階で出資とスポンサードという2つのリスクを負うことになると説明した。
これらを総じて、郡司プロデューサーはある先人の言葉からの引用であると告げつつアニメビジネスは「お札で焼き芋を焼いているようなビジネス」と表現し、アニメを制作しだすと、1億円や2億円はすぐ飛んでいってしまう非常にリスクが高い事業であると示した。つまりアニメを製作すること自体が一作品毎に数億円のリスクを負ったばくちであり、アニメを作ることだけで利益が出るわけではなく「ヒットしなければ大きな資金を失う」勝負を続けているのだと説明した。

このような高リスクなビジネスにあって、現在のところ、アニメビジネスを支えるのは、収益性の高いDVD/BD販売であり、高額なこれらの商品を購入してもらうことで初めて利益が生まれるのだと解説。ネット上などで「DVD/BDの価格が高すぎるのでは」という意見を見るが、その高単価ゆえによってアニメの制作費が回収できているという説明を行った。従って、「現在における多くのテレビでのアニメ放送はDVD/BD販売のための宣伝のために放送を行っている。」と、その特異性を改めて強調した。
郡司プロデューサーによれば、業界でよく言われるのはBD/DVDの国内でのヘビー購入者数は30万人程度だという。従って、たとえ子供向けアニメをつくりたいと願うディレクターがいたとしても、子供向け作品はなかなかDVD/BDなどでの資金回収が難しいため、そのプロジェクトは成立しないことが多い。最終的にはDVD/BD購入者層が好むものをプロジェクトとして採用するしかないのが現状なの だ。


■ 『宇宙戦艦ヤマト2199』はどのような点において特殊なのか?

前述のとおり、現在におけるアニメビジネスの流れは、BD/DVD販売の前にまずテレビ放送がおこなわれ、その後、DVD/BDの販売を進めていき、人気が出たらアニメを劇場公開する場合もあるというのが主流だ。
『2199』はそれを真逆にしたという点において特殊であると、郡司プロデューサーは解説し、その詳細を説明した。『2199』では、イベント上映を日本各地で実施しつつ、BD/DVDを劇場で販売。その後、DVD/BDを一般のショップで販売し、そして最後にMBS・TBS系列全国ネットのテレビ放送を行った。
ただ「これはさまざまな偶然が作用した」と郡司プロデューサーは断言。『2199』は劇場でのイベント上映から全国ネットの「テレビ放送まで、あらかじめ引かれたレールを走っていたように思われがちだが、当初、テレビ放送は決定されていなかったからだ。
だが結果的に『2199』のテレビ放送は成功し、ある局では、同枠始まって以来の最高視聴率を記録したとのこと。推定400万人が視聴したという。また、BD/DVDの販売は50万枚、プラモデルも大ヒットするなど、経済規模的には100億円に達したと、郡司氏はその規模感について伝えた。テレビ放送の効果も如実にあらわれており、放送してプラモデルの売り上げが急激に伸びたという。また、視聴者層も当初は、従来のヤマトファンを中心に考えていたが、予想以上に子供たちも視聴していたことが明らかとなった。


今回、テレビ放送を実現することが出来たのも、イベント上映中にBD/DVDに販売数の好調が明らかとなり、「前述した第一のリスクである製作費の回収が見えてきた」からだと郡司氏は言う。収益予想が明らかになっているので、テレビ放送を打診した際に製作委員会のメンバーがスポンサー費用を出すという決断が出せたとのことだ。
ちなみにこの全国ネットでのテレビ放送には制作会社であるアイジーもスポンサーになったのだという。当初は流すCMがなく、アイジーの一階にあるピザレストラン「武蔵野カンプス」のCM制作を大真面目に検討したとのこと。(実際にはピザレストランのCMは作られず、「キックハート」というアイジー自主制作アニメのCMが放送された。)アニメ制作費が回収できるという状況で全国ネットのテレビ放送へとつなぐことが出来たのがベストだったとアニメ放送成功の要因を郡司プロデューサーは総括する。

これらを踏まえ、郡司氏は「他の産業と同様にアニメにも売上と同時に原価が存在し、採算がとれなければ作品自体も消滅してしまう。でも意外と消費者はこの事実に気がついていない」と強調。同作展開当初も本来は、マスメディアを大々的に活用してイベント上映をしていることなどを伝えたかったものの、採算を検討した結果、宣伝を極力ピンポイントで行う戦略を採らざるを得なかったとのことだ。
しかし、そのピンポイント戦略こそが全国ネットでのテレビ放送の話が起こった時に、収益性の高さから放送へのスポンサードを可能とならしめ、テレビ放送を実現に導いたのだという。
視聴者から「『2199』をもっと宣伝してほしい」などの声も寄せられるが、宣伝にコストを掛けるということは、掛けたコストの三倍の売り上げを最低でも作らないと、その宣伝コストは回収できない。コンテンツといえども費用回収を意識した事業判断をしていかないと作品が継続できなくなる事を強調した。


アニメの配役についても、大規模なアニメ映画プロジェクトの場合、声優ではなく俳優を作品の大役にあてたりすることが多い。これも作品の認知度向上を意識してのことのようだ。テレビアニメの場合はテレビ放送それ自身が宣伝であるので、配役に声優以外を当てることはごく稀であるが、アニメ映画となると、そのような事例は非常に数多く見られる。
アニメファンの間では声優以外の方を配役に当てたりすることへの反対の声もある。それを敢えておこなうのは、「テレビなどでとりあげてもらうことが重要だから」と郡司氏はその理由をシンプルに説明した。アニメ映画は声優だけで制作することが出来るが、宣伝となるとやはりテレビを含めたマスコミにどう取り上げてもらえるかが重要となる。「好きの反対は、嫌いではなく無関心である。」というマザーテレサの有名な言葉を引用し「とにかくまずは知られないといけない、全く知らないものに対して人が劇場にいくことは絶対にない」と補足した。
また、『2199』はそのプロジェクトの特性から「テレビの終焉」的な言説での記事化を希望するマスコミも多いというが、「テレビはいらない、テレビは見られなくなった」といった言説についても、「実は皆、なんだかんだいってテレビを見ている。テレビというのは巨大な認知 獲得メディアであり、アニメ映画は最終的にはテレビに扱われないと大ヒットしない」とし、テレビメディアの大きな影響力を改めて強調した。

最後は、「アニメビジネスに参加してみよう!という人が増えるとアニメ業界も盛り上がります。ですので、さまざまな事業体の方がアニメに興味を持ち、アニメのスポンサーになってください!」と様々な業界から参加している出席者に言葉を投げかけて講演を締めくくった。
アニメビジネスにおいて従来のモデルを脱した『2199』はアニメの事業展開の新たな方向性を改めて示した作品と言える。
事実、完全新作で12月6日より全国ロードショーを控える『宇宙戦艦ヤマト2199星巡る方舟』の前にも10月11日より特別総集編『宇宙戦艦ヤマト2199 追憶の航海』のイベント上映を投入するなど新作劇場用映画の展開でも新しい試みを加えている。それだけに今後の展開も目が離せない一作だ。

参考URL
『宇宙戦艦ヤマト2199』
http://yamato2199.net
京都国際マンガアニメフェア2014
http://www.kyomaf.jp  


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