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国境を越えるコンテンツの獲得 「米州からみる日本コンテンツの魅力と挑戦」in TIFFCOM2014

[細川洋平]

日本のコンテンツを海外はどう捉えているのだろうか。2014年10月21日から23日まで東京・台場のホテル グランパシフィックLE DAIBAで開催された“Japan Content Showcase 2014”では様々なビジネスセミナーが開催された。
なかでもジェトロ主催『映像コンテンツセミナー「米州からみる日本コンテンツの魅力と挑戦」』ではそういった問いに応じるような場となった。海外のコンテンツビジネスのエキスパートが参加し、海外から見た日本コンテンツに関しての議論が大いに交わされた。

モデレーターを務めたのは、海外ドラマ『HEROES』や『Hawaii Five-O』でも活躍する俳優のマシ・オカ氏である。パネリストとして招かれたのは、アメリカでジョニー・デップをはじめ、マシ・オカ氏なども含む多くの俳優が所属する世界的に有名なエージェント企業『United Talent Agency』のマックス・マイケル氏、パリを拠点に13カ国へ動画のデジタル配信を行っている『Under the Milky Way』のピエール=アレックス・ラベル氏、メキシコの映画及びテレビ番組配給会社『Ratan Pictures』のミネコ・クリスティーナ・マリー氏、以上の3名である。

モデレーターのマシ・オカ氏からマックス氏にまず投げかけられた質問は「エージェントとは?」である。海外、主にハリウッドでは俳優に必ずと言っていいほどエージェントがいる。日本ではあまりなじみのない職業でもある。
マックス氏は「プロジェクトの交渉、資金調達、企画、プロモーション、クライアントのケアまで何でもやる仕事である」と語った。アメリカでエージェントが成長した理由には、これらの仕事について、あらゆる情報を手にしているためだと述べた。
アレックス氏は、デジタル配信のビジネスモデルとしてiTunesやGoogleを挙げ、サービス提供の手本となると同時にコンテンツを配信しているプラットフォームとしても有力であると語った。また、プロモーションに関してはGoogle AdWordsなどにも登録をし、検索できるようにするなどして、目に触れられる機会を多く設けるべきだと加えた。

一方、メキシコのマーケットというものはどのくらいの規模なのだろうか。ミネコ氏によると、映画の年間来場者数では、インド、アメリカ、中国に次ぐ、世界第4位にメキシコが位置している。
しかし、パッケージなどは海賊版が多く、正規品は流通全体の10分の1程度であるとのことで、まだまだ未整備な部分も多い様だ。


■ コンテンツが世界で成長するために

それではどのような日本のコンテンツが世界に受け容れられるのだろうか。マックス氏は日本の作品で最もブレイクした印象を持っているのは15年ほど前のホラー映画だったと振り返る。
だが、近年でも『そして父になる』(2013年公開 監督:是枝裕和)が世界で高評価を受け、『GODZILLA ゴジラ』(2014年公開 監督:ギャレス・エドワーズ)もアメリカナイズされており、無数の日本作品から派生したと見られる『パシフィック・リム』(2013年公開 監督:ギレルモ・デル・トロ)もヒットしたことからポジティブな状況であるとも見ている。
より世界に向けるためには、コンテンツの質、キャラクター、テーマ性を洗練させる必要があると述べた。それに比べるとストーリーはさほど重要ではないとの見解も示した。

日本のIP(知的財産)をアメリカはどう扱える可能性があるのだろうか。マックス氏によると2つの方法があるという。
ひとつは、『GODZILLA ゴジラ』のようなリメイクのチャンスを待つこと。ふたつ目は、オプションを付けて、両市場に配給するという方法である。日本映画にアメリカのキャストやアメリカの監督を迎えるという組み合わせや、アメリカのテーマを入れ込んだ日本作品を制作するということである。それは『トランスフォーマー/ロストエイジ』(2014年公開 監督:マイケル・ベイ)が採用した方法である。
現在は中国が市場として注目を浴びている。『トランスフォーマー』ではロケ地に香港を選び、中国の女優の李冰冰を起用した。これによりアメリカだけではなく、中国での興行収入も飛躍的に伸びたのである。

■ 配信におけるローカリゼーション

アレックス氏は、『Under the Milky Way』内で国際市場に訴える最も重要なジャンルは「長編ドキュメンタリー」であると述べた。逆にフィクション、特に日本のお笑い、コメディといったものは文化的要素の差異が大きいため、世界でのヒットは難しいとも見ている。
VOD(ビデオ・オン・デマンド)のマーケットはまだまだこれからであるとしながらも、今後有望なホームマーケット になると語った。現在、170億ドルと見られている世界のホームエンタテインメントのうち、80~90億ドルをVODが占めているのだ。家にいる時間に人々が費やすさまざまな時間の中でもVODが担う役割は今後ますます大きくなっていくだろうと語った。

また、メキシコの場合はどうだろうか。仮に日本のIP権をラタン・ピクチャーズが取得した場合は、ストーリーやキャラクターに手を加えるなどのローカライズは欠かせないだろうとミネコ氏は述べた。メキシコ国民に「特別な感情」をいただかせるためのエッセンスを入れる必要があるのだという。
ただ、先に挙げた『そして父になる』はメキシコでも評判になっており、テレビドラマ『コメットさん』(1967年)、アニメ『美少女戦士セーラームーン』(1993年)、『ウルトラマンシリーズ』は今でも繰り返し見られているコンテンツであるという。

本セミナーでは、アメリカで活躍する俳優、アメリカのエージェント、フランスのVOD配信業者、メキシコの映画配給会社と実に様々な視点を持つパネリストの意見が寄せられた。しかし、共通するのは『ローカリゼーション』ということ。それぞれの文化にはそれに適したコンテンツが好まれる。裏を返せば、国境を越えたテーマを獲得すれば多くの国で通用するコンテンツになり得るということだ。
今や国内のみではシュリンクしつつある市場をいかに世界に広げられるのか。今後の世界に対する日本市場の動向も注目していきたい。

印象深いのは、メキシコで根付いているという作品にも出てきたように、アニメ作品は言語の壁を越えるだけで世界に届けやすい。『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』(1995年公開 監督:押井守)やオスカーを獲得した『千と千尋の神隠し』(2004年 監督:宮崎駿)といった作品だけではなく、他にも可能性はあるだろう。
日本でのテレビ放送と同時にネット上で、違法配信で楽しまれているテレビシリーズのアニメタイトルも、オフィシャルな取り組みによっては世界に訴求するだろう。メキシコでの『セーラームーン』ように長く愛されるコンテンツになるのではないだろうか。そういった示唆を与えてくれるセミナーであった。 

国境を越えるコンテンツの獲得 「米州からみる日本コンテンツの魅力と挑戦」in TIFFCOM2014
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