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「ドラゴンボール」から「キルラキル」各国の日本アニメ事情:ビジネスセミナー「AnimeJapan×JETRO×Project Anime」

3月21日、AnimeJapan 2015のビジネスセミナー会場では「AnimeJapan×JETRO×Project Anime」という講演が行われた。本セミナーでは世界各地のアニメビジネス関係者が招聘され、それぞれの視点から日本アニメの魅力や今後の展開が議論された。

司会はロサンゼルスでコンテンツ系弁護士として活動する光永眞久氏。日本のコンテンツの海外展開をサポートしている日本貿易振興機構(JETRO)の海外コーディネーターもつとめている。海外からは日本のアニメ普及活動を行う非営利団体、日本アニメーション振興会(SPJA)のCEOをつとめるマーク・ペレズ氏。北米最大のアニメ系イベントのアニメ・エキスポを主催している。

アルゼンチンから参加のニコラス・アレハンドロ・ズマリーニ氏は中南米最大のコンテンツ配給会社Telefilmsのプレジデント。中南米では現在、『ドラゴンボール』や『聖闘士星矢』が絶大な人気があるそうだ。最後にタイから参加のシャムラス・ラオハスカッサム氏はコンテンツ配信を行うタイム・ワーナー系列のM TURNERにつとめる。現在はハリウッド系コンテンツが中心だが、今後は日本のアニメに注目しているそうだ。

セミナーではまず登壇者の3名に日本のアニメが世界でどのように認知されているかをうかがった。アニメ・エキスポを開催しているマーク氏はVTRとともにイベントを紹介。日本の文化がクールなものとして北米のファンに受け入れられている様子が映しだされた。運営母体の日本アニメーション振興会(SPJA)は北米ではかなり有名な団体であり、アニメ・エキスポ以外にも様々なイベントを開催。ファン同士の交流を行うとともに、BtoBのコンベンションも開催している。

マーク氏によれば、北米でのアニメの人気は30年以上の歴史があり、『セーラームーン』から新しい『キルラキル』まで人気だそうだ。ファン層も厚く、子供向けからバイオレンスな大人向け作品まで人気。ストーリーが良ければ、個性的なものでも受け入れられる土壌があるという。視聴環境はTVネットワークからケーブル、インターネットと変化。現在ではHulu、Netflixといったインターネット配信が普及しているが、大手アニメ専門ケーブルのカトゥーンネットワークも根強い人気があるそうだ。

次にニコラス氏が中南米の状況を説明した。Telefilmsは主にハリウッドのコンテンツを配給する会社であったが、最近は幅広いコンテンツの取得している。中でも『ドラゴンボール』は知名度がありながらも、南米での配給権をどの会社も獲得していなかった。そこに目をつけたTelefilmsは権利を獲得、効果的なプロモーションを行うことで大成功を収めた。

ニコラス氏が日本アニメに注目する理由は主に2点あるという。ひとつはアニメには忠誠度の高いファンが多いこと。『ドラゴンボール』といった人気シリーズはテレビで20年以上放映され、幅広いファンが存在する。当然、劇場版を公開することである程度のヒットは約束されている。もうひとつは質の高い作品を劇場だけではなく、配信においても利用できること。コンテンツを取り巻く状況が変わるなか、いかに質の高い作品を複数のチャンネルで配信できるかがポイントであるようだ。

ここで司会の光永氏から北米と南米での『聖闘士星矢』や『ドラゴンボール』といった人気作の受け入れ方の違いについて質問がなされた。ニコラス氏は『ドラゴンボール』がアメリカではそこまでヒットしないことには驚く一方、中南米での成功は効果的な宣伝広告の結果にあると分析。具体的にはローカルなファンを巻き込み、フィードバックをもらいながらプロモーションを実施。またテレビ放送時の声優を尊重して起用するといったファン目線の取り組みを行っている。

他方、マーク氏によると劇場アニメは大人と子供がともに楽しめるメディアだが、アメリカでは家で視聴する層が多いと指摘。そのため、劇場アニメは中南米のほうが受け入れられやすく、北米ではより個人の好みにあった趣味性の高いコンテンツの人気が高いようだ。

次にシャムラス氏がタイでの日本のアニメ事情を説明した。タイでも日本のアニメは15年以上にわたり人気。文化的にも近いところがあり、日本のものなら何でも好きという人もいるそうだ。同時にハリウッドのアニメ作品も人気で、シャムラス氏のM TURNERでもハリウッド作品に力を入れている。他方、日本のアニメにも注目している理由はその多様性にあるという。ハリウッド作品はスーパーヒーローのようなものが多い一方、日本のアニメは多種多様。特に15才から24才までのティーン層を狙ったコンテンツに魅力を感じるそうだ。

最後に司会の光永氏がアメリカ在住という観点から日本アニメの海外状況 をサマライズした。光永氏によれば日本のコンテンツは世界市場でまだまだポテンシャルがあるが、展開すべき戦略は主に3つにまとめられるという。前提としてアメリカ市場にはおおまかに、ディズニー映画のような子供をターゲットにしたアニメーションと、大人のオタク層をターゲットにしたアニメの2種類あるという。

その前提を踏まえて、最初の戦略として紹介されたのはマスマーケットに向けたアニメーションを製作することだ。成功例としては電通が米国の玩具企業ジャックス・パシフィックと組んで製作した『獣旋バトル モンスーノ』。北米展開を前提とした子供向けアニメーション企画だが、これを実現するには相応の資本力が必要である。次にありうる戦略はオタク向けのアニメ展開。成功例として現在のアニプレックスの北米展開があげられ、日本で放送されたコンテンツをほぼ同時配信することで多くのユーザーを掴んでいるそうだ。またSNSでのプロモーションを利用することでコアファンにアピール。もちろんローカライズのコストはかなり大きいそうだが、JETROからの資金援助も受けているそうだ。三番目は潔くアメリカをターゲットから外すこと。というのも、北米市場は競争相手が多く、ハードルが高いからだ。アニメの需要が高い他の地域を攻略してから北米展開しても遅くないということだ。

以上、セミナーの概要となる。短い時間ではあったが、各地域での日本のアニメの現状を知る貴重な機会となった。またJETROとして日本のコンテンツの海外展開をサポートする光永氏の分析は具体的なもので、今後の海外でのアニメビジネスに有用なものであったといえる。

「ドラゴンボール」から「キルラキル」各国の日本アニメ事情:ビジネスセミナー「AnimeJapan×JETRO×Project Anime」
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