夏休み。この単語を聞いただけで全身の毛が逆立ち、よだれを垂らし、海、かき氷、祭、虫、川、森…。さまざまな情景が土石流のように脳内にフラッシュバックするのは僕だけではないはずです。
土石流のようにフラッシュバックって自分で書いていても意味わからないですがイメージは伝わるかと思います。 嗚呼、夏休み。なんと甘美な響き。 なつやすみ。 なつなつなつやすみ。 なつやスミィィィいいいいいいいいいいイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィィ!!!!!!! ただ、小学生の頃とは違い、ある程度歳を重ねると「せっかくの休みなんだから家でゆっくり寝よう」などと怠け者の権化のような過ごし方をしがちです。僕も昨年は多分に漏れず家でネットサーフィンをするだけの日々を過ごし、後悔した記憶があります。 来年の夏休みこそは、例年とは異なる過ごし方をしよう。そう心に決めていました。 そこで今年の夏休み、僕が選んだのは「パプアニューギニア」です。 友達にパプアニューギニアで過ごすと伝えたら「ぱぷあにゅーぎにあ…。ぱぷぱぷぱぷ」と返ってきました。 「大丈夫かコイツ」と思ったのは正常な感覚だと信じていますが、確かに、この国のことを何も知らないことに気づきました。 そこで、事前に調べたり、ニューギニア航空の職員さんに直接聞いたりして、情報を集めてみました。 まず、パプアニューギニアは成田空港から直航便が出ています。首都ポードモレスビーまで、およそ6時間50分。日本との時差は1時間。南米やアフリカに行くよりも近いですが、未知の世界感はそれ以上かもしれないです。 ちなみに「パプアニューギニア」はここ。 オーストラリアよりも少し北側に位置する島国です。ニューギニア島の東側。西側はインドネシア領(パプア州とも)で、東経141度(実は少しだけずれているようですが)で、ほぼ直線に国境が区切られています。日本の1.2倍の、太平洋最大の国土を持ち、約690万人の人口を有します。 「パプア+ニューギニア=パプアニューギニア」という成り立ち方で、19世紀後半は北側の「ニューギニア」が独領(のち豪委任統治領)、南側の「パプア」が英領(のち豪領)だったようです。 「世界中で最も言語の豊富な国」とも言われています。英語を公用語、植民地言語のピジン語を共用語としながらも部族の数だけ言語が存在。その数はおよそ800以上とも。 今回、僕は首都を観光していないので都心部の人々のようすはよく分かりませんでしたが、少なくとも訪れたニューブリテン島の「キンベ」の人々は本当に温かかったです。 すれ違うたびに笑顔で手を振ってくれました。東南アジアなどを旅行すると親切の見返りにチップを求められることが多いのですが、パプアニューギニアでは一度もチップを求められることがありませんでした。 話は戻ります。ビザはポードモレスビーの空港ですぐに獲得できます。日本人は無料です。僕はこの空港から1時間ほどの国内線を乗り継いで、「キンベ」へ向かいました。 ホスキンス空港。ここから宿泊予定の『ワリンディプランテーションリゾート』へ車で1時間。道沿いは、永遠にパームヤシのプランテーション。本当にヤシばかり。 そもそもキンベは宿泊施設自体が多くないのですが、ワリンディプランテーションリゾートはオススメです。さまざまなツアーに参加できますし、日本人ダイビングインストラクターの屋本恵子さんが駐在しているので、英語が苦手な人も安心。 到着した日の夜に、さっそく「ホタルの木」を見に行きました。数千ものホタルが、二本の木に密集するという、不思議な場所。さながら天然のイルミネーション。ワリンディプランテーションリゾートから道とも言えない道を運転して約5~10分ほど。 なんというか、神々しかったです。熱帯の夜に浮かび上がる二本の木。月光に薄暗く照らされた大木に群がるホタル。無数のホタルが電球の役割を成し、天然の電飾を織りなしていました。 ただ、ニューギニア航空によると、2015年に数カ月にもおよんで起きた干ばつのせいで、ホタルの数が激減しているのだとか…。 それでもホタルは、妖しげな空気を漂わせつつ、くっきりと、白く火花のように光っていました。 ホタルの撮影に初挑戦。月明かりがあって写真に収めるのには難しい環境で、あまりうまく撮れませんでした…。 写真が撮れないと悟ったのか、サジを投げて他のツアーのお客さんは先に車に乗って帰ってしまいました。そんな時、ドライバーが一言。 「ミスター、まだ頑張るかい?」 「もう少し粘りたいけど、みんなが帰りたそうだから帰ろうかな…」と僕。 「それなら気にしないでくれ。また迎えに戻ってくるよ」 イケメンや…。 なんと僕ひとりのために 車を再び走らせてくれたのです。これでチップを要求しないのだから、スゴいなぁと心が暖かくなりました。撮影中も、ホタルの木を揺らしてくれたり(いいのかな…)、よく見える角度を教えてくれました。 それなのにまったく写真が撮れなかったのだから、穴があったら入りたいです。ちなみにキンベ周辺の道路は穴ぼこだらけです。 僕の気持ち的には、ホタルはこんなイメージでした。 皆さんもこのイメージのままでいてください。 ちなみに下が僕の撮影した写真。写真の上手な人にイチから撮り方を教えてもらってその通りにしたのですが…。帰ってきてこれを見せたら「お前はインセクター羽蛾か」と言われました。 意味はわからなかったですが少し傷つきました。 まともな写真が撮れず傷心中の僕を励ますかのように、部屋に帰ったらズボンから一匹のホタルが。ありがとう。 翌日は海へ繰り出しました。 ダイビング・リゾートとして世界中のダイバーが集まるニューブリテン島、ワリンディ・リゾート。手つかずのサンゴ礁、多種類、無数の魚。透明度も非常に高く、潮の流れも強くない。ビギナーからベテランまで大満足間違いなしのスポットです。 やはりダイバーが多かったですが、シュノーケリングをする方も一定数いました。 インストラクターの恵子さん曰く、「外国人はバードウォッチングやトラッキングをすることも多いけれど、日本人は海を目当てに来る人がほとんど」とのこと。 僕はビギナーで、シュノーケリングも2回目というレベルでしたが、最高でした。少し距離を置いて俯瞰すると、虹色に輝くサンゴ礁がどこまでも広がっていました。 正直、どれがなんという名前のサンゴか、なんという名前の魚か、ほとんど分からなかったけれど、それでも大袈裟じゃなく心を動かされました。 あまりにも気持ちよくて10分くらい半寝で浮かんでいたら、魚に食べられそうになっていました。 ちなみにこれは僕のアングル。圧巻です。 無人島もあり、家族連れでも楽しめそうです。 GoProで動画を撮ったのですが、本当に綺麗に撮れていて感動しました。 次は「温泉川」なるものへ向かいました。 車で約50分。300~400mの川全体が温泉のような温度になっているという、不思議な空間です。 ニューブリテン島は活火山が多いのですが、上流の源泉と川が交じり、感覚的には38度~39度の絶妙な温度で水が流れています。段差があり、腰掛けるとそれはまさに天然ジャグジー。 周囲を見渡すと完全にジャングルで、そこを厳かに流れる自然の川。体が感覚的に冷たさを覚悟するのですが、一旦浸かると温泉のような温度なのです。 今まで生きてきた感覚の中では「ありえない」情景を五感で感じとることができ、脳や体が戸惑っていました。 現地ガイドに「ここに来たらメイクするべきだ」と訳のわからない液体を顔に塗りたくられました。 ちなみに僕が飲んでいるのは栄養ドリンクではなく、ビールです。 また、パプアニューギニアはパパイヤ、スイカ、バナナなどの果物も豊富です。特筆すべきはバナナ。こんなに甘いバナナは生まれて初めて食べました。 ホタルや海、温泉川。夏休みの頂点を極めし体験をやり尽くしましたが、本当は、もっとゆっくりしたかったです。ただ、夏休みのエッセンスのようなものが凝縮された地であるように感じました。 たった4日間のパプアニューギニア滞在でしたが、帰るタイミングには小学生の頃の夏休みに感じたような、なんとも言えない浮遊感、満足感、哀愁、物足りなさ…。あのモヤモヤした感覚が押し寄せてきました。 切ない…。 あぁ、夏休み…。 明日からはまた仕事。まるで新学期の始まる学校に向かうかのような憂鬱な感覚です。クラス替えなどのワクワクイベントがあったり、もしくは入学式だけで終わればいいんですが、そうもいきません。心なしか宿題も手つかずのまま大量に残されているような気がしてきました。 夏休み感覚が抜けきれません…。 あぁ、パプア…。 帰国後。 パプア行こうぜ!!!!! ちなみに、僕が肩に手を置いているのは編集長。この後普通に叱られました。 (取材協力)ニューギニア航空
提供元:CycleStyle
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