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洋画家・宮本三郎(1905年から1974年)は生涯に二度渡欧し、西洋絵画の歴史や伝統を学びました。
1939年の初めてのパリでは、ルーヴル美術館で名画を鑑賞し、模写をするなどして、西洋絵画の真髄に触れ、マチスやピカソなど20世紀初頭の前衛絵画の影響を受けながら、帰国後、独自の写実絵画の可能性を模索しました。 宮本三郎が特に多大な影響を受けたのは、マチスの奥行きを拒否した裸婦と室内の壁紙文様が一体化した装飾的な絵画でした。宮本の裸婦もシーツの文様と浴衣を着た裸婦が一体化しています。陰影をなくしたため、裸婦の重さが消失し、まるで裸婦が画面から転げ落ちて来そうな不思議な絵画が誕生します。以後、宮本の女性像の探求は画業の中心となり、留まるところを知りません。 着衣のポートレート、ベットに横たわる裸婦像、椅子に腰かける女性座像、鏡の前の裸婦立像、着衣の全身像など、様々な構図の作品が次々と生まれます。 モデルの女性の髪型や顔の表情、肌の色、衣装の素材や柄、クッションの小道具なども微妙なタッチで描き分け、室内の背景や床面についても様々な色や柄を試み、無地や装飾的な文様を組み合わせ、女性像を千変万化させます。 一方、もう一つのテーマである花も初期から晩年に至るまで様々な画風で描いています。最初は、フォーヴィスムの画家、ドラン風の太いタッチで描く花瓶に挿した花の絵です。次に登場するのは、18世紀フランスの画家シャルダンを彷彿させる静物画で、観るものに詩情を感じさせます。そして、晩年になると、原色の赤や緑、青を多用した強烈な色遣いと荒々しいタッチで、宮本独自の花の静物画が生まれます。 宮本三郎が生涯を通じて追求したテーマである”花々と、女たち”は、いずれも儚い命の光り輝く瞬間を捉えており、生命への讃歌が謳われています。花と女性をモチーフとした今回の展示で、宮本三郎の絵画に込めた思いを感じて頂ければ幸いです。
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